採用市場の中心となりつつあるZ世代は、情報収集や意思決定の多くをSNS上で行っています。従来の求人媒体や企業HPに頼る採用活動だけでは、十分な接触機会を確保できないケースが増えてきました。特にアルバイト・パートや若手社員の採用では、SNSを母集団形成の起点とする発想が欠かせません。本記事では、海外の具体的な取り組みを紹介しながら、日本企業が取り入れるべきヒントを探ります。
SNSが採用の第一歩になる時代
近年、若年層はInstagramやTikTokを「情報検索の第一歩」として活用しています。彼らは求人サイトで職を探す前に、SNSで「企業の雰囲気」や「社員のリアルな声」に触れたいと考えています。こうした行動特性により、企業はブランド認知から応募までの導線をSNS上で設計する必要性に迫られています。
また、採用コストの高騰も背景のひとつです。従来の媒体掲載や人材紹介は高額になりやすい一方、SNS広告は細かなターゲティングと動画コンテンツを組み合わせることで、応募単価を抑えつつスピーディに母集団を形成できる可能性があります。
Z世代が示す就活行動の変化
TikTok Lead Adsの活用(小売・医療業界)
アメリカの小売企業では、TikTokのLead Generation広告を活用し、月平均333件の応募リードを獲得。リード単価は1件あたり約21ドルに抑えられました。応募フォームをTikTok内で完結させることで、手間を減らし効率的な母集団形成に成功しています。
CVS HealthのTikTokキャンペーン
米大手ドラッグストアチェーンのCVS HealthはTikTok広告を活用し、約240万回のインプレッションを記録。応募1件あたりのコストは20.60ドルと、従来型の媒体と比較しても費用対効果の高い結果を得ました。
KFC FinlandのTikTok広告事例
フィンランドではKFCが18~24歳をメインターゲットにTikTokのインフィード広告を展開。2週間で約14,200クリックを獲得し、高いCTRを記録しました。短期間で若年層への接触を広げ、応募関心を集めることに成功しています。
Instagramでの企業文化発信(スタートアップ事例)
テック系スタートアップ「InnovateTech」は、Instagram Storiesを活用して社員の日常や企業カルチャーを発信。フォロワー数が限られていても、候補者の関心を高め、採用ブランディングと応募喚起を両立させました。
日本企業が取り入れるべき実践策
求人媒体依存からSNS分散型へ
若年層採用では、求人媒体だけに頼るのではなく、SNSを母集団形成の起点とする必要があります。特にTikTokやInstagramは候補者の日常に溶け込む形で接点を作れるため効果的です。
動画で“共感”を作る
TikTokでは短尺動画で仕事内容や現場の雰囲気をリアルに見せ、Instagramではリールやストーリーで社員の声やキャリアパスを共有。候補者の共感を呼びやすい「映像体験」を重視することが重要です。
応募体験のシンプル化
SNS上で完結するワンクリック応募や、モバイル最適化されたフォーム設計が鍵となります。応募のハードルを下げることが応募率改善につながります。
採用指標の見える化
広告指標(インプレッション、CTR、応募単価)と採用指標(面接率、定着率)を連動させて管理し、データに基づく改善を行う必要があります。SNS広告の成果は代理店任せにせず、採用部門が主体的に設計・評価する姿勢が不可欠です。
まとめ
若年層の採用は、求人媒体だけでは十分に届かない時代になりました。TikTokとInstagramを活用した母集団形成は、海外ですでに成果を上げており、応募単価や接触効率の面で注目されています。日本企業にとっても、動画による共感創出と応募体験の簡便化を柱にしたSNS活用は、採用競争力を大きく高める手段となるでしょう。
出典
https://info.recruitics.com/blog/case-study-lead-generation
https://ads.tiktok.com/business/en-US/inspiration/cvs-health-1127
https://www.shook.digital/case-studies/kfc—tiktok-advertising-campaign-for-recruitment