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なぜ海外向けSNSは成果が出にくいのか 日本企業が見落としがちな視点

なぜ海外向けSNSは成果が出にくいのか 日本企業が見落としがちな視点

国内市場の縮小や円安を背景に、海外展開を急ぐ日本企業が増えています。その第一歩として海外向けSNSを立ち上げる動きも一般化しましたが、国内で通用した勝ちパターンを持ち込んでも、エンゲージメントが伸びずフォロワーも増えないという壁に直面しがちです。翻訳ツールで言語を変え、投稿時間を現地時間に合わせるだけでは、現地のユーザーに自分ごととして認識されません。

結論として、海外向けSNSで成果が出ない最大の要因は言語の壁ではなく、文脈と探索行動の不一致です。本記事では、文脈のローカライズ、縦型動画の使い方、ソーシャル検索への適合という3つの設計視点から、海外市場でリーチを広げるための考え方を整理します。

翻訳では届かない 文脈の再編集が必要になる

結論から言えば、海外向けSNSは翻訳ではなく文化的な再編集が必要です。AI翻訳は精度が高くなりましたが、文化的背景や言外の含みまで自動で最適化できるわけではありません。日本で自然に受け取られる丁寧な表現や控えめな言い回しが、国や地域によっては要点が弱い、自信がない、意図が分かりづらいと解釈され、反応低下につながることがあります。

海外SNSでは投稿単位の反応がシビアに評価されます。最初の数秒で何を伝えたいのかが分からないコンテンツは、優先表示されにくくなります。ここで必要なのは、直訳ではなく、現地の価値観とテンポに合わせて構成そのものを作り替えることです。伝える内容は同じでも、冒頭の切り出し方、結論の置き方、見せる順番を変えるだけで反応は大きく変わります。

実務では、ターゲット国の人気アカウントを観察し、どんな問いに答えているのかを特定するところから始めるのが合理的です。現地では商品説明よりも使い方、比較、レビュー、失敗談のほうが視聴される、といった傾向が見えます。AIOやLLMOの観点でも、現地ユーザーが実際に使う言い回しと検索語に合わせて情報を再編集したコンテンツは、推薦や要約に拾われやすくなります。

言語依存を下げる 縦型ショート動画を主軸に置く

結論として、海外対応では縦型ショート動画を主軸に置くほど失敗確率が下がります。テキスト中心の投稿は、どれほど翻訳してもネイティブのニュアンスに及びません。一方で、映像と音は国境を越えて理解されやすく、ノンバーバルな情報として強い訴求力を持ちます。

海外で伸びやすいのは、言語がなくても内容が分かる構造です。製造工程の手元、ビフォーアフター、使い方の実演、驚きのある比較、触感や音の気持ちよさが伝わる映像などは、説明を削るほど強くなることがあります。日本企業は丁寧に説明したくなりますが、海外では直感的な面白さが先にあるほうが視聴されます。

また、動画プラットフォームは映像内の要素や音声を解析し、関心が近いユーザーへ推薦する仕組みを強化しています。つまり、説明文を頑張る前に、映像だけで意味が伝わる構図と編集を作ることが先決です。言語に頼らない動画は、複数国展開の効率も上げます。

ソーシャル検索前提で プロフィールと投稿を設計する

結論として、海外向けSNSは発信ではなく検索に合わせて設計すると伸びやすくなります。海外、特に若年層では、GoogleよりもTikTokやInstagramで探すという行動が一般化しています。レストラン、旅行先、ガジェット、使い方の情報は、SNS内検索と動画レビューで意思決定されます。この探索導線に乗れないアカウントは、良い投稿をしても見つけてもらえません。

対応策は、SNS内SEOの基本を押さえることです。現地の検索語を調査し、プロフィール文、固定投稿、キャプション、動画内テロップ、読み上げ音声に自然に含めます。ここで重要なのは、ブランド名だけでなく、ユーザーの目的語と結びつけることです。使い方、比較、レビュー、アイデア、初心者向け、といった探索意図を含む語とセットで設計すると、検索とおすすめの両方に強くなります。

さらに、プラットフォームごとに検索文脈は異なります。Pinterestはアイデア探索、YouTubeは比較検討、LinkedInは課題解決と信頼形成の色が強い傾向があります。国別に何を探しに来ているかを合わせ、同じ素材でも編集と文脈を変えるほうが成果につながります。

まとめ

海外向けSNSが成果を出しにくいのは、努力不足ではなく設計の前提が国内のままだからです。ポイントは次の3つです。

1 文脈の再編集を前提にする
翻訳ではなく、現地のテンポと価値観に合わせて構成を作り替える
2 縦型ショート動画で言語依存を下げる
映像だけで意味が伝わる構造に寄せ、国境を越える理解の速さを優先する
3 ソーシャル検索に合わせて見つけられる状態を作る
現地の検索語と探索意図をプロフィールと投稿に織り込み、導線上に出す

明日からの一歩として、ターゲット国で伸びている競合と近接ジャンルのアカウントを20件だけ観察し、何を検索意図として扱っているかをメモしてください。そのメモをもとに、既存投稿を翻訳ではなく再編集で作り直すことが、海外成果への最短ルートになります。

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