経営者自身がSNSで発信することは、今や特別な取り組みではなくなりました。トップの発信が企業認知を高め、採用や営業の接点を広げた事例も確かに存在します。一方で、更新が止まったまま放置されたアカウントや、不適切な発言が原因で信頼を損ねたケースも少なくありません。
経営者の時間は、企業にとって最も高コストなリソースです。流行や他社事例に引きずられて始めると、その投資は成果ではなく負債として残る可能性があります。本記事では、経営者アカウントが採用や営業に機能する条件と、逆効果になりやすい構造的な要因を整理し、やるかやらないかを判断するための視点を提供します。
採用に効くのは透明性を受け入れられる組織
結論として、経営者アカウントが採用に効くのは、価値観や意思決定の背景が応募判断に直結する組織です。成長途上の企業や専門性の高い人材を求める場合、候補者は条件面以上に「誰と、どのような課題に向き合うのか」を重視します。経営者が、理想だけでなく現状の課題や葛藤も含めて発信できる場合、共感を軸としたマッチングが起きやすくなります。
一方で、発信内容と現場の実態にズレがある場合、採用には逆効果になります。理念や精神論が先行し、日常の働き方が見えない発信は、入社後のギャップを想起させます。また、運用を完全に外部に任せた結果、本人の言葉ではない投稿が続くと、面接時に違和感を生みやすくなります。経営者自身の言葉で語る時間が確保できない場合は、無理に個人アカウントを持たない判断も合理的です。
営業にプラスになる発信と信頼を削る発信
営業面で経営者アカウントが機能するのは、売り込みではなく信頼形成に寄与している場合です。BtoBや高単価商材では、顧客は契約前に経営者の考え方や業界への理解度を確認する傾向があります。業界全体の課題や構造を整理し、示唆を提供する発信は、検討段階での安心材料になります。
逆効果になりやすいのは、承認欲求が前面に出た投稿や、営業色の強い発信です。自社サービスの優位性を繰り返す投稿や、派手な交友関係を強調する内容は、一部の共感を得ても、慎重な意思決定者を遠ざける可能性があります。特に堅実さが求められる業界では、個人ブランディングが企業ブランドと衝突するリスクを考慮する必要があります。
継続できない発信は資産ではなく負債になる
経営者アカウントで最も避けるべきなのは、更新が止まった状態の放置です。数か月間動きのないアカウントは、外部から見ると「事業が停滞している」「意思決定が継続できない」という印象を与えかねません。これは採用にも営業にもマイナスに働きます。
情報の鮮度は、検索や推薦の文脈でも重要視されています。更新が止まった主体は、徐々に露出機会が減っていきます。もし定期的な発信時間を確保できない場合は、経営者個人での継続運用を前提にしない方が賢明です。その場合、公式アカウントでの発信や、必要なタイミングで経営者コメントを出す形式の方が、リスクと負荷を抑えられます。
まとめ
経営者アカウントが採用や営業に効くかどうかは、次の3点で判断できます。
・発信が経営者本人の言葉として成立しているか。
・売り込みではなく、相手にとっての示唆を提供できているか。
・継続できる体制と覚悟があるか。
経営者発信は万能策ではありません。今やるべきか、見送るべきか、別の形で補完すべきか。自社のフェーズとリソースに照らして判断すること自体が、戦略的な意思決定になります。


















