SNSが採用の第一歩になる時代
これまで求人といえば求人サイトや紙媒体、または企業HPが中心でした。しかし今、若い世代の情報収集の起点は大きく変わりつつあります。特にZ世代(1990年代後半〜2010年代生まれ)は、SNSで企業や仕事に触れる機会が圧倒的に増えています。TikTokやInstagramで偶然目にした動画や投稿が「この会社面白そう」「この仕事やってみたい」といった応募のきっかけになるケースが日常化しているのです。
企業側にとっても、SNSを採用戦略の中心に据えることは、単なる広報活動ではなく「応募機会を逃さないための必須施策」となりつつあります。
Z世代が示す就活行動の変化
調査によると、米国の求職者の約46%が「SNSで見つけなければ出会えなかった求人がある」と回答しています(Fortune/Yahoo調査)。検索エンジンで求人を探すのではなく、普段の生活の中で自然に触れているSNSでキャリア情報を見つける行動が当たり前になっているのです。
また、Z世代はテキスト情報よりも動画による理解を好む傾向が複数の調査で示唆されています。数十秒の短尺動画の中で、企業文化や働く現場の雰囲気を直感的に把握できることは、彼らにとって非常に魅力的です。逆に言えば、従来型の求人票や文字情報だけでは「リアルな姿」が伝わりにくく、候補者の心を動かせない時代に突入しています。
海外での最新動向
海外ではすでに、SNSを軸とした採用施策が進化しています。
米陸軍のインフルエンサー施策
米陸軍はTikTokやInstagramの人気インフルエンサーと提携し、訓練やキャリアの実像を短尺動画で発信。若年層へのリーチを強化する狙いがあると報じられています。ただし「成果」の程度については記事によって評価が分かれます。
LinkedIn「Future of Recruiting 2025」
このレポートでは、AIを活用した候補者マッチングやスキルベース採用の拡大が示されています。実際に「AIアシスト機能を使う企業は質の高い採用につながる可能性が9%高い」といったデータも公表されています。
TikTok Resumes
Chipotleなどの企業が参加し、動画履歴書を受け付ける取り組みが行われました。恒常的な機能ではありませんが、動画を通じて応募するスタイルが話題を呼びました。
Instagramでの社員ストーリー発信
北米の一部企業では、Instagramを使って社員の日常や働き方を紹介し、応募者に企業文化を伝える事例が報告されています。広がり方は企業ごとに異なりますが、「体験型」の採用広報手法として注目されています。
実践策(アクションプラン)
SNSが採用に与える影響は世界的な流れであり、日本に限らず各国企業が取り組めるヒントは以下のとおりです。
1. 発見から応募までの導線を設計する
TikTokやInstagramは「発見の場」、詳細はLinkedInや企業サイトで確認、その後ATS(採用管理システム)で応募受付という多層的なファネルを設計する。
2. 「仕事のリアル」を短尺で表現する
社員の1日紹介や職場雰囲気、Q&A動画など、Z世代が共感しやすいフォーマットを15〜30秒で展開。
3. AIを活用した効率化
一部のATSや選考ツールで導入されている生成AIを使い、スクリーニング質問や評価項目を半自動で作成。候補者体験を損なわず効率化を実現。
4. リスクマネジメントを組み込む
炎上やネガティブ拡散に備え、Q&Aテンプレートや危機対応マニュアルを事前に用意。加えて応募者へのレスポンスSLAを定め、「ゴースティング(不返答)」を防ぐ体制を整える。
まとめ
SNSは今や若年層にとって「求人を見つける第一歩」の場です。各国の企業にとっても、従来型の求人媒体だけでは届かない層にリーチするために、SNSを活用した採用戦略は不可欠になっています。特に「短尺動画」「AIの効率化」「リスク対応」の三本柱を組み合わせることで、採用競争力に大きな差が生まれるでしょう。
出典
– LinkedIn: Future of Recruiting 2025
– Fortune/Yahoo調査記事「SNSでの求人発見に関する調査」
– SHRM(Society for Human Resource Management)関連レポート
– TikTok公式ニュースルーム「TikTok Resumes」告知、Chipotleニュースリリース
 
          
      
    




















